エンコーダのデジタル制御技術

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エンコーダのデジタル制御技術

デジタル制御技術の発展は目覚しいものがありますが、年々に高精度、高速化への要求が高まっており、それに合わせた形で より高精密なフィードバックを行えるセンサーが必要になっています。非接触、長寿命の光学式エンコーダは、機器の可動部の位置、速度、方向を正確に検出し、その情報を駆動部にフィードバックするためのセンサーとして、プリンター、コピー機等のOA機器、計測機器、医療機器、ロボット等に モーションコントロール用センサーとして 幅広く使用されています。
エンコーダには検出対象を入力軸の回転角または回転量として検出するロータリーエンコーダと、直線的な変位量を検出するリニアエンコーダがあります。

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構造

光学式エンコーダは発光素子と受光素子の間に可動スリットと固定スリットを設け、可動スリットを移動させることにより、光の強弱を作り、受光素子で電気信号の強弱に変換し、電子回路により波形整形することによって、スリットの移動量に相当した矩形波パルス、または近似sin波のサイクル信号として出力するものです。
光学式エンコーダは、次の基本的要素により構成されます。

(1)発光素子

発光素子としては、650nm帯や850nm帯の赤色や赤外域の発光ダイオードが一般的に用いられています。高精密な情報を得る為に 点光源発光ダイオードなども使用されることがあります。

(2)レンズ

発光素子からの光を平行化する為に、発光素子と可動スリットの間にレンズを用います。同様なレンズ機能を発光素子側に持たせた レンズの無いものもあります。

(3)可動スリット、固定スリット

可動スリットは、ロータリーエンコーダの場合、回転ディスク、リニアエンコーダの場合、スケール等と呼ばれ、ポリエステルフィルム、ガラス、または金属板でできたものが用いられます。可動スリットの他に 固定スリットを一対で用いる場合があります。

(4)受光素子

受光素子の受光部分にはプレーナータイプのフォトダイオードが最も多く使用されています。センサ用フォトダイオードは非常に信頼性が高く、また、出力短絡電流の入射光量に対する直線性が良く、周波数応答も優れているため、高精度品、高パルス品に多く用いられています。フォトトランジスタが用いられるのは素子自体で比較的高い出力電圧の必要な場合です。これら以外に フォトダイオードと信号処理回路をワンチップ化した ICチップを用いた受光素子もあります。
図1.エンコーダ

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出力方式による分類

出力信号形式により、光学式エンコーダはアブソリュート型とインクリメンタル型に分類されます。図2にそのスリットを示します。

(1)アブソリュート型

アブソリュート型は、可動スリットに対する絶対位置を出力するものです。スリット板のそれぞれの回転位置を固有の符号模様にしてあり、多数の受光素子によってそれぞれの固有の信号をそのまま取り出すことができます。この固有の符号は純2進数であったり、2進化10進数であったりします。アブソリュート型は、本質的に入力軸の絶対値を示すため、耐ノイズ性に優れていますが、極めて高価になるため用途が限られています。

(2)インクリメンタル型

インクリメンタル型は、可動スリットに対する相対位置を出力するものです。入力軸の回転量に比例したパルスの数を出力します。2つの出力信号の間に電気的に90゜の位相差をもたせた2相出力のものと、さらに原点信号として1回転1パルスのZ相を加えた3相出力のものがあります。図2にそのパルス例を示します。
図2.インクリメンタル型出力波形

(3)用途

光学式エンコーダの用途は極めて広く、特に最近ではDCモーターに直結し、DCモーターのデジタルコントロール用に使用されることが多くなってきています。これらの応用された製品としては、プリンター、コピー機等のOA機器、計測機器、医療機器、ロボット等があります。
  1. 1プリンター:印字用のキャリッジ制御、紙送り制御、給紙等のDCモーター制御
  2. 2コピー機:転写ベルトモーターの制御、紙送り制御
  3. 3スキャナー:走査制御
  4. 4プロッタ:プロッタペンの位置制御、紙送り制御
  5. 5計測機器:測長器(ノギス、ハイトゲージ)
  6. 6ロボット/NG機械:可動部分の位置、速度制御