フォトトランジスタの構造と特徴

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構造

フォトトランジスタは図1(a)のように通常、NPN構造がとられ、受光部にはコレクタ・ベース接合が使われます。図2(b)にそのバンド構造を示します。
フォトトランジスタに次式(1)を満足する光が入射すると、価電子帯の電子は伝導帯に上がり、あとに正孔が残ります。

Eg<hv=hc/λ………(1)
Eg:半導体のエネルギーギャップ、h:プランク定数
v:振動数、λ:波長

電子、正孔は拡散により作られたPN接合の拡散電位に従い、電子はN層へ、正孔はベースであるP層へ各々ドリフトされます。その結果、ベースエミッタ接合は順バイアスされ、通常のトランジスタ同様、エミッタより電子の注入が始まります。そしてベースを通り抜け、少数キャリアである電子に対し順バイアスされているコレクタに収束されます。すなわち、光によってベース電流が制御でき、増幅されたコレクタ電流を制御できることになります。
その時のコレクタ電流ICELは図1(c)の等価回路のごとく、コレクタ・ベースの光電流ICBLのhFE倍されたものとして式(2)となります。

ICEL≒ICBL×hFE………(2)

hFEは通常のフォトトランジスタで500程度、高出力のものではhFE=1000以上のものが採用されています。
図1.フォトトランジスタの構造

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特長

(1)光電流

フォトトランジスタの光電流は、フォトダイオードの光電流に比べ、式(2)のようにhFE倍され、数百倍の値を取ります。これにより、フォトダイオードでは数mm角チップであるのに対し、フォトトランジスタでは1mm角以下と面積効率が格段と良くなります。フォトトランジスタより更に出力が必要な場合は、ダーリントン接続されたフォトダーリントントランジスタを用いることができます。(図4) フォトダーリントンは、フォトトランジスタの数百倍の出力を持ち、数Luxの照度で動作が可能です。
図2.フォトダーリントン等価回路

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フォトトランジスタの代表特性

(2)分光感度特性

フォトトランジスタの分光感度特性は、コレクタ・ベース接合のフォトダイオードとしての分光感度特性に同じですが、N/N+の2層構造ウエハを使用するため、ピークが800nmと長波長側への延びがありません。ピーク波長940nm前後の赤外発光ダイオードと組み合わせると、ピーク値の約半分の感度となりますが、フォトトランジスタに関する限りそのずれ分はhFEで数百倍に増幅でき、またパッケージなどで十分にカバーできますので、実用上問題はありません。

(3)暗電流

フォトトランジスタの暗電流ICEOは、光が当たらない時の漏れ電流で、コレクタ・ベース間のフォトダイオードとしての暗電流ICBOがhFE倍されたものです。これは光信号から見れば雑音となり得ます。従って暗電流がS/N比を決め、使用可能な最小入力信号を制限します。現在のフォトトランジスタはプレーナ構造で、ICEOも数nA以下と非常に低くなっています。

(4)応答特性

フォトトランジスタの応答特性はhFE、コレクタ・ベース間の接合容量(CCB)、外部負荷(RL)などで決まります。出力を上げようとしてhFEを上げるとベース抵抗が上がり、またチップサイズを大きくするとCCBが増加し応答が遅くなります。応答速度は通常のフォトトランジスタで数μsec、フォトダーリントンでその数十倍となっています。

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形状

フォトトランジスタは、そのパッケージの方法により特性が大きく変わってきます。そのため用途に合ったフォトトランジスタを選ぶ必要があります。
図3(a)のフォトトランジスタは、樹脂ポッティングタイプで小型、安価であり、小型機器や民生用機器に適しています。指向性は広くなっていますので、光軸合わせが比較的容易です。図3(b)のハーメチックシールタイプのフォトトランジスタは、金属キャップとステムを電気溶接したもので、屋外使用等、厳しい条件下でも使用できるように信頼性が高められています。受光部にはガラスレンズを採用し、凸レンズタイプは指向性が鋭く高出力が取り出せます。フラットレンズタイプは指向性が広く、外付けレンズ等の光学設計が容易です。図3(c)のタイプは樹脂成形品で薄型、立形状のフォトトランジスタです。発光、受光を対向させて使用するフォトインタラプタなどには最適です。いずれのフォトトランジスタもより高出力が必要な時にはダーリントンタイプを、また、ベース端子つきのものを選べばより応答速度や暗電流の改善を図ることができます。
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図3.フォトトランジスタの形状