PN接合のエネルギーバンド図を示します。(図1(a))この図は熱平衡状態のもので、N側からP側へはポテンシャル障壁があるため、接合を通しての電荷移動は起こりません。
今、外部からPN接合に順バイアスをかけるとポテンシャル障壁が減少し、(図1(b))に示すように伝導帯の中で電子がN側からP側に流れ、価電子帯の中では反対方向に正孔が流れます。これが少数キャリアの注入です。少数キャリアの注入が起こると、熱平衡状態よりも余分の少数キャリアが存在することになり、高エネルギー状態にあって不安定なため、比較的短い時間内に空乏層近傍で価電子帯に落ちてエネルギーを失い消滅します。この再結合の際、失われたエネルギーの一部として光が外部に放出されます。
半導体結晶は、その電子の取りうるエネルギーが運動量によって異なり、直接遷移形と間接遷移形の2つのタイプに分類されます。両者のエネルギーバンド構造と光量子(フォトン)の放出過程を図2に示します。
直接遷移型(図2(a))では伝導帯の谷に存在する電子が価電子帯の正孔と再結合してエネルギーを失う時、運動量の変化がないため失われたエネルギーは光になります。この現象は発光再結合と呼ばれます。GaAsやそれにAlAsを一部入れたGaAlAsなどは直接遷移型で、光の放出確率が高く、高い量子効率を持っています。一方、間接遷移型(図2(b))では運動量の変化、すなわち格子振動を伴います。このため運動量の変化を伴わない発光過程と格子振動が同時に生じるため、発光再結合が生じる確率は非常に小さくなります。この非発光因子に電子が再結合することを非発光再結合と呼びます。Si、Ge、GaPは、このような間接遷移を行うことが知られています。
再結合の際、エネルギーと発光波長は次の関係にあります。
E= h*v = h* c/λ (h:プランク定数 ν:振動数 c:光速 λ:波長)
λ[nm]=1240/E(eV) となります。
発光再結合におけるEは、およそその半導体の禁止帯幅Egとなります。GaAsは禁止帯幅Egが1.42e(873nm)ですから、赤外発光に適した結晶です。
またGaAlAsは一般にGa1-xAlxAsのx値を変えることにより、EgがGaAsより大きくでき、赤外から赤色発光まで広範囲に波長を変えることが可能になります。